おはようございます。
かちゅーです。
今日は武士道の七徳の5つ目と6つ目にあたる、「正直と誠実(Veracity and Sincerity)」と、「名誉(Honor)」について書きます。
武士道における正直と誠実
武士は幼少の時から、正直で誠実に生きることを厳しく教えられていました。
どんなに美しい礼儀作法を身につけ、美しく振る舞ったとしても誠実なこころが伴っていなければただの媚びへつらいになります。
武士はこのような表面的で心の伴わない行いをすることは大変大きな恥として忌み嫌っていました。
また士農工商のトップにいた当時の武士はその社会的地位の高さから、誰よりも正直である必要があると考えられていたようです。
武士は決して嘘をつくことはなかったため、何か約束事をするときも書面による証明が必要なかったと新渡戸翁は述べています。
実際に、「二言」をした武士が死をもってそれを償ったというエピソードがいくつも語られていたようです。
そのくらいに、武士は一度発言したことは命をかけて守り通し実行したのでした。
それほどまでに正直・誠実であることが武士の中では重んじられていたため、当時では武士の発言は何よりも信頼されていたといいます。
武士にとっては、誠実さを欠くことは何にも変えがたい恥でした。
それが結果的に人々からの信頼を集めたようです。
これは、現代ビジネスの場においても通ずることがありそうですね。
例えば明治維新の後に財閥をたて商人としての大成功を収めた岩崎弥太郎翁や渋沢栄一翁も、武家の出身でした。
幼少の頃より叩き込まれていた武士道が、彼らの偉業をなす上でも何か重要な意味をもっていたのではないかと推察できます。
武士道における名誉
武士道において誠実さを欠くことは、この上ない恥として名誉を傷つけるものでした。
また武士にとって名誉は、命よりも大切な尊厳だったのです。
ですから、武士には強烈な廉恥心がありました。
小さい時から恥をかくことは人間にとって最悪の屈辱として教えられていたようです。
「そんなことをして恥ずかしくないのか」
「人から笑われるぞ」
といった教えは今にも残っていますが、当時の武士たちもこれと同様な言葉で恥をかくことに対する嫌悪感を教育されていました。
当時の武士たちは、恥をかくくらいなら進んで死を選んだと言います。
そのくらい名誉を尊重していたからこそ、当時の武士たちは日々修練に励み自らを磨き上げることができたのではないかと推察します。
自尊心も相当高かったでしょう。
自尊心も自己肯定感も、英語にするとself-esteemという同一語になるのですが、この武士道が示すところの自尊心は私たちが日常使っている自己肯定感とは少し違った意味を持つように聞こえます。
武士にとっての自尊心は自らの命と威信をかけたものであったため、高潔で重いものでした。
ですから自分の名誉を汚され、恥をかかされることは命をかけてでも阻止したいことだったのです。
このような恥に対する嫌悪感は、時に行き過ぎた行為にまで結びつきました。
自分の名誉が誰かによって傷つけられたと感じた際には、その人を殺してしまったりもしたのです。
自分の服に虫がついていたと教えてくれた町人をその場で切り殺した武士もいたという強烈な例え話を新渡戸翁はあげています。
明らかに行き過ぎで狂人めいていると言わざるをえませんね。
忍耐と寛容、己を愛するこころ
名誉への執着から節度を保っていたものは忍耐と寛容の心でした。
些細なことで無闇に取り乱す行為は、それこそ恥であると考えられていたのです。
新渡戸翁は、孟子をはじめとする様々な偉人・賢人の言葉引用して耐え忍ぶことの大切さを伝えています。
すなわち、自分一人の尊厳を守ろうとして人を傷つけるのは愚かなことであるということです。
一方で、大義のために自分の名誉を守ることは極めて重要なこととして捉えられました。
しかし残念ながら、
そのように寛容・忍耐の心をもって自分の名誉毀損に対する自制心を持つ極地まで達した武士は、
当時をもってしても非常に少なかったであろうと新渡戸翁は述べています。
そのくらいに人として高潔な生き方を貫くのは難儀なことであることが伺えます。
では、どうすれば自分の名誉を重んじ高い自尊心を保ちながら、寛容と忍耐の心で人々に優しく接することができるのでしょうか?
新渡戸翁はそのヒントとして、自己愛について述べています。
ここではその中でも私が特に秀逸だと感じた、西郷隆盛の言葉を紹介します。
「道は天地自然の物にして、人はこれを行ふものなれば、天を敬するを目的とす。天は人も我も同一に愛し給ふゆえ、我を愛する心を以て人を愛する也。」
新渡戸稲造「武士道」(1899)
ざっくり意味だけお伝えすると、道を極めるにはまず天を敬い、自分を愛する心を持って人のことも愛しましょう。
という感じでしょうか。
武士のように日々の修練によって自らを鍛え上げ、大義名分を掲げて命をかけて生きることができると、自然と自分を愛することができるようになるでしょう。
自尊心も高まると思います。
今の日本に少し不足しているのは、そうした自分の尊厳を重んじる心のように思われますが、
そのためにはまず天を敬う心や、大義を掲げる覚悟が重要なのかもしれませんね。
最後に
いかがでしたでしょうか。
質問や感想などをコメントでシェアしていただけますと幸いです。
日本人として世界にはばたく人材が増え、グローバル競争の激化が進む現代社会においても日本が高いプレゼンスを発揮できるよう私も全力を尽くします。いずれは世界が一つになり、平和で豊かな社会になるような一助となれば幸いです。
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